君がいるということ。


 首の違和感が消え、臣の方へ再び向くと、先ほどとはどこか違う異空間が臣を取り巻いていた。

 臣は依然として疑いの目を詩花に向けている。

「あーそーだよ。あたしが作曲しました」

 これで話にピリオドがつく。そう確信すると、再び窓の外に目を移した。

 今押されたばかりのピリオドのように、木の葉の間からサッカーボールがちょうど見える。そのサッカーボールが高く蹴り飛ばされた途端、詩花の確信は打ち砕かれた。

「見せて!」

「あ?」

「その楽譜見せてよ」

「はあー?」

 ため息のように、腹の奥から吐き出した。

 詩花は一瞬の酸欠に見回れながら、真剣すぎる臣の目にたじろいでいた。

「なんでまた……」

「俺さー。文化祭の中夜祭にライブやるんだよねー」

 詩花は興味なさげに耳を傾けていたが、突然目を見開き、「まさか……」と口を挟んだ。

「お? わかった? わかっちゃった?」

 詩花の険しい表情と心情を読み取り、臣は興奮して次の声を待った。

「私の歌をそこで歌うとでも?」

「ザッツライト! まじエスパーじゃん!」


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