君がいるということ。


「勘弁してくれよ……」

 なかなか諦めてくれないキャッチセールスに捕まったような気分が詩花の肩を重くし、思わず顔を両手で覆った。

「だめ? だめ?」

 臣の相変わらずな元気な声がさらにその上からのしかかる。

 今ある現実を転換させようとするように、詩花は別の話題を切り出した。

「大体、中夜祭ってなんだよ。フツー後夜祭だろ?」

「は? 先生の話聞かなかったのかよ。我が校は、後夜祭じゃなくて中夜祭。一日目の後に残ってやるの」

「だっせーなあ。おい」

「まあアニメとかドラマとかのようには行かないわけですよ。いわゆる大人のジジョーってやつ」

「ジジョーねえ……」

 元々無かった詩花の文化祭への関心がマイナスに片足を入れ始める。

 青春の匂いもしない文化祭に期待どころか参加さえもしたくはなかった。

 しかし新たな問題が詩花の頭に浮かぶ。

「ってことはおまえ軽音? 部活ちゃんと行けっつーの」

 そう言いながら、詩花は手でシッシッと追い払う仕草をした。

「俺は軽音ではありませーん」

 臣はその態度に負けじと下を出した。


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