君がいるということ。
「は? じゃー何で文化祭で歌うんだよ」
「俺、有志参加だもんよ。軽音はぜってーバンド組まなきゃいけねーからやだ」
「有志?」
「詩花はLHRに何してるわけ? 聞いてなさすぎっしょ」
「うっせーな。文化祭には興味ねーんだよ」
詩花は何かが始まる真っ白な自分の気持ちが、文化祭には当てはまらないものだと決めつけていた。
かたどられた行事。それに諭されないと動かない生徒。ありきたりの一言で片付けられる全てのものに無関心だった。
誰かが死んで、それで感動を取ろうとする話。波乱万丈の道を歩きながら一人の人と結ばれる話。映画でも小説でも、そんなありきたりな話は嫌いだった。嫌いというか、興味がない。
「なんで? 楽しみじゃない?」
「……はっ」
詩花は小さく吐き出し、足を思い切り前に投げ出し、椅子から落ちそうなくらい端に座り、背もたれに全てを預けるような大勢を取ったあと、ゆっくりとした口調で言った。
「教師が決めた範囲内で、誰かが決めた日にちと時間に、学校にふさわしい出し物をするんだぜ? 楽しいも何もあるかよ。めんどくせーだけだ」