君がいるということ。


 臣はきっぱりと言い切った詩花をしばらく見た後、ギターをそっと隣の机に置いた。

 ギターの弦が震えた音が、アニメのお茶目な効果音のように聞こえた。その後の静寂を守り続けている中、臣がイスを引く音だけが一瞬響いた。

 詩花のそばまでよると、下を向いたままの視線まで顔を落とす。

「じゃー、みんなで型にはまってねーことすればいいじゃんか」

 詩花は臣の気配を感じながら、依然として下を向いたまま、「無理」と漏らした。

「みんな型にはめられてることさえ気づいてねー。あたしと同じ価値観のやつなんて、いやしねーんだよ」

「そうか?」

「そうだろーが」

「じゃーそれは詩花の観察ミスだな。型にはまってねーやつ、少なくとも一人は知ってるし」

「あ? 誰だよ」

「俺」

 詩花は顔を上げた。覗きこんでいる臣と視線がぶつかる。

 一瞬、まるでビデオを一時停止したようだった。

 互いを確認できているはずなのに、なぜかまだまだ探ろうとする。そのように。

「ばか言うなや。なんでおめーが」

「ビコーズ。俺は軽音って型で歌わない。ほれ。ひと味違うだろ?」


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