君がいるということ。


「ライト点けて走ってんのかよ」

 変なところが真面目というか何というか……。

 臣は何十億と言う存在の中の面白い子を見つけた気がして、その光を目で追った。

 暗闇に色を奪われた自転車が、門を出て右に曲がり、そのまま桜の青々とした葉に隠れて見えなくなった。

 やっべ……。俺も帰んなきゃ。

 自分の今までの独り言に恥ずかしさを覚え、心の中で焦りながら、階段を勢いよく駆け降りていった。


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