君がいるということ。
探し終わったカードを左手に持ち、「ほれジャンケン」と詩花は右手を構えた。
「あれ? 会話終了?」
「いーからジャンケンしろよ」
「あいさー」
結局、臣が勝ち、詩花は適当にカードを入れ替えた。
臣はそれを見て考え込む。
「あー。誰がババ持ってんだろーなー」
「いや。おめーだろ」
「何でバレてんの!?」
「あたしが持ってないならおめーしかいねーじゃんか!」
「そんなのわかんねーじゃん!」
詩花は臣がムキになるのを見て、バカバカしくなり、「わかったから早くひいて……」と、大好きな昼休みの終わりを望み始めた。
時計を見ると、臣が来てからちっとも進んでいないように思える。
進めー……。と念じながら臣のカードへ目を戻した瞬間、臣は「やべっ。ヘルプだナイト」と、先ほど臣が立っていたドア付近を目でさした。
「竹中くうん。話があるんだけどお」
そこには陽気そうな女の子が手を振りながら近づいている姿が見えた。
まさにその名の通りというかの黒髪美人見習いのような彼女はピンクの細い縁のメガネを直しながら、詩花と臣の間にあるトランプを凝視した。