君がいるということ。
「誰?」
女の子っぽい女の子は好かない詩花は、冷たく臣に言い放った。
「竹中くうん。この人だれえ?」
詩花と違い、その女の子は目をわざとパチパチさせて臣を覗き込む。
臣は目のやり場に困り、自分の手の中に集中した。
おちゃらけたピエロのマークがさらに恥をさらすかのように、狭い紙の中を体一杯踊り動いている。
臣は頭の中で作戦会議を始めた。現実逃避と言ってしまえばそこまでなのだが、臣にとっては、ババ抜きの方が重要なのである。
しばらくの沈黙が流れた。
詩花は考え込む臣の顔を見つめ、つかみ所のない思考回路の推理に集中しようとしていた。
一方の女の子の方は、焦る様子もなく、きょとんと言った。
「みいは、黒川美咲です。みいって呼んじゃってください」
みいって……。
詩花だけではなく、様子を楽しそうに見ていた優や碧までもが、彼女の脳裏を疑った。
詩花は吹き出し、さらに突っ込みたい衝動をおさえ、臣から目を離さずに、何かに似ている、その“何か”を模索した。
この感じ……と言うか喋り方……どこかで聞いたことがある。
一方の臣も、トランプの中に重要な何かを探し当てた。