君がいるということ。


 臣は美咲の腕を揺らす動作に振り回されながら、自分がおこしたすべての状況を整理し始めた。

 整えられ、すみに置かれたトランプをもう一度切り始める。

「おい。今度はなんのゲームする気だよ」

 全てに従い、平穏に過ごすことを選んだ詩花は、カードが一定のリズムで音をたてるのをじっと聞いていた。

「ゲームは終わり」

 臣は依然、カードから目を離さずに言う。

「じゃあなんできってんの?」

 ババ抜きである程度そろってしまったカードも、もう十分ぐちゃぐちゃになっただろう。

 臣は詩花に返事をしようとしたが、肩から伝わる揺れと、そのずっと前からされている質問に先に答えることにした。

「黒川。わりーけど、俺、おまえの気持ちには答えらんねえ」

 カードをきる音はまだ続いている。

「俺には、詩花がいるから」

 臣はまゆをよせ、平然とした口調で言い、その間もカードを絶えず、切り続けた。

 詩花は体が一気にレンジでチンされたように湧き上がり、そしてそれが一瞬にして汗として流れていった。

 しかしそんな今巻き込まれたばかりの詩花に比べ、もともとの当事者の美咲の方が余裕の態度だった。


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