君がいるということ。


「だーもー!」

 全てをかち割るほどの声を出したつもりだったが、バック音には到底及ばず、隣にいる美咲だけが目を見開く。

「てめえ! 地球人か宇宙人なのかはっきりしろよ! まじうぜえ!」

 足を上履きの硬さを利用するように大きく鳴らし、詩花は立ち上がった。

 玄関の隣に影となっている階段へと足を進める。

 詩花はこの独特の隠れ家のような雰囲気が好きだった。たくさんのものに苛まれ、それでも賢明に光を放とうとする、そんな存在が好きだった。

 その階段の目の前にある図書室に明かりがついているのを見て、つくづくこんなうるさいところにある図書室を不思議に思う。

「……待てよ」

 一段目に足をかざそうとした時だった。

 聞き覚えのあるような、無いような。

 微妙な感覚を突きつける声が、詩花を振り返らせた。

「は? 誰?」

 うっとうしそうに声を濁らす。

 振り向いた視線の先に詩花を見つめている主は、美咲しかいない。

「今……おまえ?」

「あんたにはあのキャラ通じないの分かったから、素で喋る。降参降参」

 両手を軽くあげ、手を振りながら美咲は詩花のもとに足を運んだ。


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