君がいるということ。


 美咲のものとは思えないほどずっと低くなった声。その声と顔のギャップは、今までの経歴を重ねて、凄いものとなっていた。

「へー。まともに喋れんじゃん。最初からそうすりゃーいーんだよ」

 詩花は腕を組みながら、自分より少し上の美咲に余裕を見せながら笑った。

「しかたねーじゃん。一種の職業病ってやつ。学校が始まったばっかのときに思わずあの口調しちゃったもんだから、意地でも貫き通してるわけ」

「は……。んであたしにもあの口調か。顔見て、通じねーとかわかんねーの?」

「あんたは詐欺だべ。あたしよりメイド向きな顔しやがって」

 詩花は口内を噛み、美咲を睨みつける。

 ……また言われた。

 よく昔から初対面の人に、ロリ顔とか、童顔とか、無駄に見た目で判断されてきた。

 でも、そんな瞬間が一番大嫌いだった。

「……うっせーよ。てめーみたいに飾るやつ……飾ってるとこしか見ねーやつ、大っきらいなんだよ! 人のこと呼び出しといて、結局喧嘩ふっかけるだけかよ! もう話しかけんな!」

 頭も心も、そして空気も、嵐のような瞬間だった。

 ちぐはぐな音楽が、この時だけはドラマのワンシーンのように、似合っている。


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