君がいるということ。


「……おい。いーかげん本題言ってくれよ。何であたしのことわざわざ呼び出したん?」

「あれ? 一気に行っちゃう?」

「勘弁してくれよ。どーせ、恋愛診断かなんかで、あいつと赤い糸が結ばれてるとかっしょ」

「あいつって、竹中君? だとしたら微妙にジャストミート」

 詩花は、「微妙って……」とどうでもいい素振りを見せながら、美咲の本当の答えを待った。

 しかし、聞く準備をちゃんとしている詩花とは違い、美咲は軽い口調で、「実はー」と切り出した。

「死に方診断で、イニシャルT.Zの人と結婚すると、苦しい思いをせずに死ねるって出て、ラッキーアイテムは、わら人形だったのさ」

「……はあ!?」

 前につんのめってしまうほどに気が抜け、詩花はしっかりとあわせていた目を、躊躇いもなく切り離した。

 どこからどこまでふざけているのか見当もつかないが、多分全て本気なのだろう。

 美咲は途中で道を失った自分の視線を、もう一度、今度は目を合わせてくれない詩花につなぎ合わせた。

 詩花ならわかってくれるとか、簡単な思いではなく、それ以下の、しかし大事なところで、何かを思い描く。


< 57 / 114 >

この作品をシェア

pagetop