君がいるということ。
「詩花は、竹中君の彼女だから、言っておこうと思って」
「おーい。ちょっと待った。そこの君」
無差別にものを探索していた目を美咲に戻し、片手を上げて、呆れ声を吐き出した。
「何であたしがあいつの彼女になってんねん」
美咲は思いがけぬ詩花の言葉に、口元を緩める。
「え? 違うの?」
「違うっつーか……。むしろあいつからあたしを救い出してくれ」
詩花の呆れ顔は、段々と脱力した表情へと変化していく。
「んー……でもなー。竹中君は詩花のこと気に入ってるっぽいし……」
「まじやめてくれー」
詩花はそう言って顔を手で覆い、俯きながら、指の間の小さな隙間で、美咲を見上げた。
「あー……。つまりあんたはあたしが気に入らないと?」
よくある友達同士の質問に、恋愛と友情、どっちを取るかというものがある。
もちろん詩花はどっちでもいいし、そんなのどうでもいいが、美咲の考えは詩花には当たり前にわかるはずがない。
たとえ友情を取るとしても、こんな短時間で美咲と詩花の間に友情が芽生えたなんて、到底思えない。