君がいるということ。
しかし美咲は相変わらず軽い口調で切り返す。
「気に入らない? なんで?」
「あー……。君はそういうタイプじゃないんだね」
呆気なく過ぎていく会話にやっと慣れ始めながら、詩花は美咲にもう一度質問を試みた。
「じゃーなんで、あたしにわざわざそんな話したん? 気に入らないわけじゃ無いんだろ?」
「んー……やっぱあれだよねー」
美咲は少し間をおき、今までよりも強く詩花の目を見て言った。
「やっぱ正々堂々と恋愛しないと、実る恋も実らないっしょ」
夕日がこの暗い踊場に差し込んでいるように、なぜか暖かかった。
その暖かさは独特で、詩花には美咲が、美咲には詩花が、暖かさの支点となっていた。
詩花は黒い髪に隠れた真っ白の肌に出来ている笑顔に、何となく感づいていた、とある疑問をぶつけてみた。
「中学のとき、あいつにわら人形渡して告白したのっておまえ?」
しかし負けじと美咲も、何となく感じていた願望をぶつけてみる。
「詩花が友達になってくれたら、そしたら教えるよ」
美咲は清々しい顔をしながらも、手には汗が絡みついている。