君がいるということ。
「あ? 友達?」
「あたしさ、あのキャラだから元中一緒の子とは話せないし、素の口調で話せてるの、詩花だけだし……」
「あほくさ……」
小さくなり、くぐもっていく美咲の声を、詩花は鼻で笑い、蹴散らした。
詩花よりも少し大きな美咲の背は、みるみる縮んでいくように、どこか頼りなく、物悲しさを持っていた。
「自分で自分を制御して……ばっかみてー」
追い討ちをかけるように付け足すと、詩花は四階へ向かうために、階段の方へと体を向けた。
螺旋状に立ち上っていくようなそこは、中心の細い隙間から、一階のタイルが小さく見える。
美咲は「ばっかみてー」と自分の現状を言い切った詩花の言葉を頭で理解しつつも、肯定も否定も出来ずに、その場に立ち尽くしていた。
確かにバカみたいで、浅はかだ。でも、そんなバカを貫き通す自分は、どっちかって言ったら、嫌いじゃない。
美咲は階段をゆっくりと上っていく詩花の方へ顔を上げ、背筋を伸ばした。
「こんなあたしじゃ、詩花の友達になれないの? 友達ってそういうもの?」
詩花は手をつけていた、冷たい手すりから手を離し、足を止め、振り向いた。