君がいるということ。
「あ? 楽譜?」
「うっそ!? 忘れてる感じ!? 昨日言ったじゃん!」
「あー……じゃあ忘れたってことにしといて」
「ひど!」
「大体あれ本気だったわけ?」
「ちょー! ちょーちょーちょー本気!」
「うそくせえ……」
会話が進むにつれヒートアップしていく臣とは裏腹に、詩花の感情は冷めていく。
臣はそんな詩花の表情を見て、静かながらに考えていたネガティブな感情を思い出した。
いつだって本気とは思われない。でもこっちとしては大真面目だ。
「やっぱ人って、見た目が一番なのかな」
「は?」
さっき自分が体験したばかりのことが、まさか臣の口から出るとは思わず、詩花は机の上のバックから右に視線をずらした。
「いやー……つまりさ。俺って結構おちゃらけたやつじゃん? だからそれだけで本気じゃないとか、真面目にやれとか、すんげえ言われること多くて……」
そう言っている臣の顔はいつに無く真面目だった。
詩花は始めて見る、そんな臣の表情を取り付かれたように見つめる。
もし、ジャンケンゲームのグリーンピースなら、すぐさま、ドンっと言っているであろうほどに、臣と詩花の心境はそっくりだった。