君がいるということ。


「……ったく」

 そのまま耳を傾けていようと思ったが、臣が再び話し始めようとしないため、詩花は仕方なく口を開いた。

「なーんで、無駄にシンクロすんのかな」

 呆れた声を出す詩花に、臣は首を傾げる。

「シンクロって……誰と誰が?」

「おまえとあたし」

「なんで? どこが?」

 どこが? と聞かれると言うことは、必然的にそれに答えなければならない。そこに導いたのは詩花なのだから。

 詩花はバックから手を離し、一歩下がってイスをひいた。

 四本の足のゴムの部分が床と擦れる音がする。その鈍い音に合わせて、詩花の手元が微かに震えた。

 ある程度ひいたそこにゆっくりと腰を下ろすと、スカートに包まれていない部分が冷たさに声を上げた。

「あたしの第一印象ってどうだった?」

「えー……」

 臣はわざとらしく首を傾げ、定位置に戻してから、「口わりー女」と笑った。

「顔とかはどう思った?」

「え? 顔? そんなん覚えてねーよ」

「あっそ」

「顔がどうかしたん?」

 臣はその時の自分を呼び戻そうと、詩花の顔を巧緻な視野で見つめた。


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