君がいるということ。


 昨日までは実感がわかなかったそれが、名付けられたことにより、リアルなものとなって蘇ったようだった。

 夜の闇に際立つ黄色が去っていくように、今日という永遠に一度しかない瞬間も去っていく。

「なあ。詩花。俺が詩花のことを萌顔とか思わなかったみたいにさ、俺のこともふざけたやつって決めつけないでよ」

 詩花はふと、さっきまでの疑問を胸に浮かべた。

 ふざけたようでどこか真っ直ぐで、不真面目なようでいつも真面目。

 そんな飾らない臣が、飾らない姿の答えだと気づいた。

「ごめん」

 無意識のうちに呟いていた。

「おまえは、バカなくらい大真面目なやつだな」

 詩花の言葉に、臣は頬にしわを寄せる。

「許すから楽譜持ってきて!」

「それとこれとは話が別だろーが!」

 鳥たちの競争はもう終わったのだろうか。果たしてゴールはどこにあるのだろうか。

 明日は晴れるだろうか。太陽は今どこにいるのか。

 その全ての答えが、この空の中に散りばめられている気がして、詩花は光を取り戻し始めた一番最初の星を指差した。


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