君がいるということ。



 文化祭が本格的に動き始め、クラスは今まで以上に、授業放置状態になり始めた。

 毎週水曜日のLHRの時間、担任の女教師も若さを生かしたように、ハキハキと出し物の提案をする。

「片桐センセー、張り切りすぎっしょ」

「なんか張り切ってる姿を見れば見るほど、やる気が消えてく」

「むしろ帰りてー」

 詩花と碧と優は、相変わらずやる気がなく、話し合いに参加するどころか聞く耳も持たない。

 しかし、話し合いの意見というか、騒がしい雑音が飛び交っているように聞こえる時点で、詩花たちが参加してもしなくても、さほど変化がないように思える。

「あ、そーいやー一組の子から変な噂聞いたんだけど」

 勝手に席を移動して、詩花の隣の男子のイスに座り、詩花の机にひじを突きながら、優が切り出した。

「詩花、竹中臣と文化祭に有志参加でライブやるってマジ?」

 詩花はいきなりすぎて、一瞬内容を飲み込めずに、歯で噛みほぐした。

「はい? 誰が?」

「いや。だから詩花が」

 騒がしく話していた三人の間に、珍しい沈黙の音が流れた。

 ちっとも気にならなかった教室の声が、耳にいたいほどに騒がしく聞こえる。


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