君がいるということ。


 一日が終わるのは簡単だ。だから太陽は早く沈もうとするのだろうか。

 雲が美しく、紅色に色付く。

 快晴よりも、少し雲がある方が空が美しく見えてしまうことを、太陽はどう思っているのだろう。

 一見主役でありながら、本当は引き立て役になってしまっていることに気付いているのだろうか。だから悔しくて、早く沈もうとするのだろうか。

 そんなことを知らない雲は、とにかく横へと流れていく。

 そんなころ、教室は詩花一人になっていた。

 厳密には一日が終わるにはまだまだ時間があるが、どうも学校が終わると、一日の終わりと感じてしまう。

 一人の教室は、やはり、あっけらかんとしていた。

 まるで朝と今とで、教室の広さが変わってしまったようだ。

 一望千里とまではいかないが、詩花の心に色を塗るのには、ちょうどいい状態だ。

 詩花はいつも通り、ノートを開いていた。

 適当な掃除風景を思わせるような置いて行かれた埃の小さな粒が、足元に突っ立っている。

 机とイスの全ての足に埃がまとわりつき、詩花はふとデパートに売っていた、フローリングに傷をつけない足カバーを思い出した。


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