君がいるということ。


「おい! なんだそれ!」

 にわかにクラスが静かになった。

 詩花の珍しい大きな声が、みんなの驚きを誘ったのだ。

「詩花ー? どーした珍しく」

 教卓に立ってみんなをまとめていた文化祭委員の女子が、呆気にとられた顔で詩花を見ている。見渡せば、他のみんなも。

「……わり。何でもねえ」

 片手を軽く上げ、苦笑いで答える。

 それでまた先ほど通り、喧然とした空気が戻ってくると詩花は考えていたが、空気は思わぬ方向に流れていった。

「そーいやー詩花、勇士でバンドやるんでしょ? クラスの方、大変だったら当日は当番いいよ?」

「おーい……ちっと待てや」

 文化祭委員の突然の発言に、詩花はたじろいだ。

 気づけばクラス全員が、詩花と文化祭委員の会話に食い入っている。

「おめーどっから聞いたん?」

「え? 学年で大体の子は知ってるよ?」

「そこまで!?」

「ってか文化祭マニュアルの有志参加者リストに、ふっつーに載ってる」

「はい!?」

 詩花は無意識に立ち上がり、「ちょ! それ見せて!」と教卓に詰め寄った。


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