君がいるということ。
「ここだけど……」と、ページを開き、名前が並んでいるリストの一部を指差す先を見ると、確かに“駿河詩花”と記されている。
「え!? ちょ!? まじ誰だよ。私の名前書いたやつー……」
詩花が頭を抱えてマニュアルに顎をつき、うなり声をあげると、ちょうどというほどチャイムが呆気なくなった。
珍しく静かな教室に響きわたるチャイムを聞いても、詩花はそこを動こうとしない。それどころか、微動さえもしない。
チャイムが鳴り終わり、教室がいよいよ騒がしくなろうとした途端、また違う騒がしさが到来した。
「詩花ー! 楽譜持ってきてくれたあ?」
「おまえか!」
ずかずかと遠慮もなく教室を横断してくる臣の姿に、詩花は確信をついた。
「え? 俺? 何が?」
「おめー勝手にあたしの名前書いたっしょ!? んだよバンドって!」
「あれ? 出ないの?」
「誰が出るっつったよ!? まじふざけんな!」
「んーでも有志参加は変更不可だし。ほら、学校に企画書出しちゃったからさ」
「有志って何!?」
「そっから!?」