君がいるということ。


 碧と優はいつのまにか仲良くなった二人の光景を不思議に思いながらも、笑いが止まらなかった。

 噛み合わない二人の会話は、どこか息がぴったりだ。

「詩花詩花」

 目の前で繰り広げられる怒鳴りあいに、しばらく口を挟まなかった文化祭委員が声を小さく出した。

「有志っていうのはね。部活とか、委員会とか、学校内以外の団体のことを言うの。だからバンドの有志参加は、軽音部じゃないバンドの参加ってこと。有志も申請すると少ないながらも費用が貰えるから、もう費用は配られた後だし……キャンセルは無理なんだよね」

 キャンセルは無理。

 有志がどういうものか。費用をいつもらったのか。

 話の趣旨は興味深いものばかりだったが、詩花に一番重くのしかかったのは、“キャンセルは無理”と言う紛れもない、聞き間違えもない、しかし間違えであってほしい言葉だった。

「なんてことをしてくれたんだよおい……」

 今ある全てのものが信じられなくて、詩花は怒る気力さえ無くしてしまっていた。

「いーじゃんいーじゃん。文化祭を一緒にエンジョイしようぜ」

「無理がありすぎだよー」


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