君がいるということ。


 うなだれる詩花を見ながら文化祭委員は腕を組み、くだらないものを見るように臣に視線を変える。

「竹中は相変わらずマイペースなんだな」

 すかさず臣は敬礼の姿勢をとった。

「おっす瀬戸さん。うちの詩花が世話になってます」

「うちの詩花ってなんだよ。詩花はうちのクラスのもんだぞ」

 文化祭委員の瀬戸あやなは冷たい視線で臣を見上げながら、うつぶせだままの詩花の頭を撫でた。

 その感触に反応して、詩花は顔を上げる。

「あやな、こいつと知り合いなん?」

 あやなは詩花の頭に乗った手で、ポンポンと二回頭を軽く叩くと、「まあお恥ずかしいながら中学が一緒なんですよ」と苦笑いした。

「恥ずかしいってなに!?」

「そこを聞く? その質問自体恥ずかしーよ」

「瀬戸さん冷たいっ! エスよー。みんなこの人ドエスよー。逃げてー」

「……きも」

 中学から仲が良かったのか、思い思いの言葉をぶつけ、じゃれあっているように見える二人に挟まれ、詩花はもう一度教卓に額を強く擦り付けた。

 地獄だ……。

 もともと最悪な行事と考えていたが文化祭が、地獄に変化しはじめていた。


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