君がいるということ。
「放課後の竹中臣ワールドにようこそ」
のんびりと流れ続けるはずの時間が、急に抑揚を始めた。
臣はどっかの本の表紙になりそうなほどの目の前の詩花と夕日の光景に目を奪われながら、その画の中に自分を入れた。
「なんだよそれ」
肘を突いたまま、詩花が顔だけ向ける。
「もうなんかそんな感じっしょ?」
「おまえ日に日にバカになって行き過ぎだろ」
「じゃー詩花は何やってんのさ?」
「だから、光合成」
数日前に交わした会話がデ・ジャヴのように繰り返される。
しかしその時とどこか違う雰囲気が、そう思わせる感情をダムのようにせき止めていた。
「詩花、葉緑体持ってんの?」
「そうそう。血管等変にね」
「人間じゃなかったのかー。うかつだったー」
臣はすでに定位置となった、詩花の隣の机に座り、頭を抱えて演技をして見せた。
「……で、おめーあたしを勝手に参加させて、どーゆーつもりだよ」
変な方向によじれ始めた会話を修正するように、詩花は新しい話題を切り出した。
臣は詩花の怒り混じりの口調に気を取られることもなく、嬉しそうに切り返す。