君がいるということ。


「詩花の作った楽譜はピアノ引き語りじゃん? だからギター用に編曲してくる」

「は? おめーそんなことできんの?」

「詩花の作った楽譜はコードが土台で出来てるから余裕。ついでに歌う曲も選んでくる」

「まじでこの曲歌うのかよ!」

 ある程度見た楽譜をそろえ、バックの中にしまおうとする臣の手を指さして言った。

 臣は何をそんなこと今更、とでも言うように、「普通に歌うのが四曲と、アンコール一曲」とチャックを閉めた。

「アンコールなんてあんの?」

「俺らの実力次第。アンコールって言われたら歌う」

「ついでにボーカルはおめーだけだよな?」

「え? 詩花がメインだよ?」

 もう何度目になるかわからないが、またもや詩花は開いた口がふさがらない。

「……まった。あたしは歌が下手なんだ」

「大丈夫大丈夫。瀬戸隊長から、詩花はクラス一歌がうまいって聞いたから」

「は!? いつ!?」

「今日のLHRで、詩花が放心状態の時。“おめー詩花はめっちゃ歌うまいぞ。いいやつ捕まえたな”って」

「あー! やー! なー!」

 クラスメイトまでグルとなると、さすがの詩花も気分が落ち込みだす。


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