君がいるということ。
「本当にうまくないんですけどー。あやな何考えてんだよ……」
「だから俺のギターの伴奏で歌ってちょ」
「これならピアノのみ参加の方がまだ良かった……」
詩花の声は段々と遠ざかっていくように、小さくなっていった。
それと反対に臣は少しずつ現実化していく思い描いた世界に、胸を躍らせ、じっと黙っていられないようだ。
「じゃー今度こそ本題のバンド名ね! 意見がある人は挙手!」
「二人しかいねーのに話し合いみたいにすんな!」
「段取りは大事でしょ!? あ。俺意見あります!」
臣が自分を指差しながら、高く手を挙げる。
詩花は呆れてそれを見ていたが、臣の「指して指して」と言う目に降参し、「はい。そこの君」と臣に意見を促した。
「昔父ちゃんが言ってたんだけど、“おまえはバカだから物事決めるときは消去法にしなさい”なんだって。だから消去法で決めたらいいと思います!」
「は? 消去法でこんなの決めたら大変なことになっちまうだろ。大体どうやって決めんのさ」
「まず、いらないものをあげていきます。俺勉強! あ。体育は残しといて。あとはー……うーんそれぐらいかな。はい。詩花も!」