君がいるということ。


 詩花は一応考えてみたが、悔しいながら臣と同様、勉強以外いらないものが何もない。

「おまえの意見に異議なし」

「よし。じゃー勉強以外と言うことで……」

 ここで臣の口の動きが止まる。

 喋りながら考えることができないのか、それからしばらくの間無言が続き、やっと言葉が返ってきた。

「……こっから俺はどうすればいーんですかね?」

「知らねーよ!」

 提案者張本人が首を傾げ焦っている姿は、詩花の怒声を誘う以外の何物でもない。

「ちゃんと考えてから物事喋れや!」

「おっかしーなあ。こんなつもりじゃなかったんだけど……」

 臣は頭をかきながら、再び黙り始めた。

 真剣に考えているのか、ただぼうっとしているだけなのか、その顔からは読み取れないが、多分考えているのだろう。

 どれぐらいこの沈黙が続いているのか。二人はその質問に相違った答えを持っていた。

 詩花は長くて長くてイライラが増していたが、臣は短すぎて、逆に困っていた。

 こんな短い時間じゃ、いい提案もふざけてるように思われるだけだ。

 臣は自分の中の自分に対する偏見の気持ちでこの沈黙をすごすのが精一杯だった。


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