君がいるということ。
「そうだ詩花。俺歌ってて思ったんだけど、詩花って夢とかある?」
「夢? いや。別に」
詩花の感情は臣への好感へと一目散に上っていた。故に口調は少し緩やかになる。
「お。俺も俺も」
「ってか夢なんて欲しいと思ったこともねえ」
「またもや俺も。でもここ……」
「夢を育む夢立高校」
「なのにね……」
初めて息のぴったりあった会話に二人は目を見開いた。
途端に笑い始める。
「俺らダメな生徒だな」
「いーんじゃね? そんな具体的な夢持った奴なんか、そんないねーよ」
何が面白かったのか。自分たちの不似合いさか、それとも会話があったことか。
二人ともよくわからないまま笑った。
「じゃーいらないものリストに夢追加」
「あ。まだそれ続いてたんだ?」
詩花はさっきの歌は幻覚なのかと、臣の発言を聞いて思った。
「もちろん。でもこう考えてくと、いるものって何だろうね。勉強と夢以外……」
「むしろありすぎだろーが」
「え? うそ? ありすぎ? それは困るわー」
臣はギターを隣の席に置き、顔をゆがめる。