君がいるということ。


「そう言うときは発想を反転させんだよ」

「反転? あの画像加工すると、顔が黒くなるやつ?」

「あー……」

 詩花は相変わらずの臣に、言葉を選ぶ。

 どう考えても歌っているときと雰囲気が一致しない。

「つまり、いるもので決めるんじゃなくて、いらないもので決めろってこと」

「おっほーい。詩花あったまいい!」

 臣はあぐらをかいていた足を一度持ち上げて叫ぶと、足を普通に下ろしてブラブラとふり始める。

「じゃあじゃあー。勉強と夢で決めるんだね!」

「……どう考えても勉強はバンド名には不似合いだからいらないかと」

「お! 消去法の消去法? 詩花やるねえ」

 臣は楽しくて仕方ないのか、机から足をふっていた反動で降り、詩花の机に手を着けた。

「ってことは、夢はいる! とかそんな感じ」

「は? 今夢はいらねーって話したばっかじゃねーか」

「あーもーややこしい!」

 そう言いながら、今度は碧の席に後ろ向きに座り、詩花の机に肘を突く。

「ちょ! ちか!」

「夢はいらない! これでどうよ?」

「センスなさすぎ……」


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