君がいるということ。
「古典の古ーい時代から、現代の外来の横文字まで、末永い感じでいいじゃん!」
「勝手にすればいーよ」
臣は詩花の返事を聞き、嬉しそうに微笑んだ。
「ユメイラズ……」
口調だけでは、漢字仮名交じりからカタカナになった違いがわからないが、それでも詩花は臣の中の意識の変化を読みとり、自分たちの新しい関係をその名前がそっと祝福してくれているように感じた。
臣はなんとも言えない羞明を見つめている気分だった。
その感情はふつふつと沸き上がり続け、臣の心を刺激する。
無意識に笑顔がごぼれる。
感情の波に押され、何も言えなくなった臣を不審に感じながら、詩花は時計を見た。
もうすぐ下校時刻のチャイムが鳴る頃だ。
「あたし帰るから」
詩花は席を立ち、唖然としたままの臣を通り過ぎた。
「あ……詩花」
臣は虚ろになっていた目を覚醒させ、急いで振り向いた。
そして我に返ったように呟く。
「ありがと」
詩花はそれを聞き、振り向いて足を止めた。
「言っとくけど、おめーのしたこと許すなんて言ってねーからな」
それだけ言うと、詩花は教室を後にした。