君がいるということ。
ちょうど詩花と臣が教室をあとにし、碧と優が目の前に風が通り抜けたあとの静けさを感じている頃、美咲が教室に入れ替わりで入ってきた。
詩花と臣がいたような名残が残る空間に美咲は目を瞬きながら、「しい様いないんですか?」と碧に問いた。
「詩花は……えっと……さあ?」
碧は美咲と目を合わせないように、言葉を考える。
自分の過去を知っている優に目を合わせようとしない美咲を見ながら、優もまた、何となく過去を知っているものとして、居心地が悪そうにうつむいた。
その間、碧は感情のズレの核心を突く。
「今日は竹中君じゃないの?」
鋭い質問を受け、美咲は自分の過ちに気づいた。
キャラを作りながらも、自分の感情は本当に求めているものへと向かっていたのだ。
「あ……今日はちょっとしい様に用事があるから……」
どうにか取り繕いながら、碧に答える。
「いないならいいです」
しかし壊れそうな自分の本心と仮面はもう耐えきれないと察し、美咲は急いでその場を後にした。