君がいるということ。


「それは私の主観的考えだから、とがめられても困りますよ」

 しかし詩花はそんなこと関係ないと言わんばかりに、あやなに文句を言い続ける。

 その間に臣は詩花のバックを取りに行き、まだご立腹気味の詩花の手をもう一度握った。

「詩花。行くよ」

 臣の行動に詩花が驚き抵抗する前に、あやなが口をおさえた。

「あっらー。知らない間にそういう関係?」

「違うからっ!」

 詩花が急いで否定したが、臣はそんなのお構いなしに、グイグイと手を引き、そのまま教室から強制的に詩花を連れ出した。

 あやなはそんな状況を無言で見つめ、二人が去ると、ダンボールに色を塗っている優と碧の下へよって、しゃがんだ。

「おー、あやな、どしたねー」

「うちらけっこー真面目にやってるっしょ」

 はけをペンキの缶に入れ、出してダンボールに綺麗な赤の線を入れながら、二人は突然のあやなの訪問を迎えた。

「真面目っつーか……雑すぎじゃない?」

 あやなは窓際で乾かしてある、塗り終えたダンボールを見て言った。

 確かに塗り終えたはずのそこにはムラがあり、あちこちダンボールの茶色がむき出しになっている。


< 97 / 114 >

この作品をシェア

pagetop