君がいるということ。
「……そこは言っちゃだめ」
下にひいた新聞紙にめちゃくちゃにペンキをはみ出しながら手を動かし、二人同時に口元に人差し指をあてた。
少し動くだけで上履きに吸盤があるように新聞紙がくしゃっとまとわりついてくる。
あやながそんな足元を見ていると、その顔がみるみるうちに青ざめていく。
「まっ! 君たち何枚新聞紙ひいた!?」
「あ? 一枚だよ」
「そ。シゲンハタイセツニ!」
「あほー!」
あやなは足元に絡みつく新聞紙から飛び降り、二人のダンボールをひっくり返さない程度に新聞紙をめくった。
そこにはしっかりワックスがかけられた木目に、ダルメシアンの模様のように不揃いについた赤い斑点。
あやなは自分の全身全てから水分が抜けていく気がした。
「うつっちゃってるよ! どーすんのさ!」
あやなの怒鳴り声に二人も新聞紙からおり、その下を見た。
「あちゃー。ここだけ華やかになったね」
「この際綺麗に染めちゃう?」
ふざけあいながら笑う二人にあやなは怒りが沸き上がる。
「何考えてんの!? ほら! 早くもっと新聞紙ひいて!」