姫は今日もご機嫌ナナメ

「よろしくな、日浦 翔??」


タケ先輩は笑顔を崩さずにそう言った。

だけど。


「薫、行くぞ」


そんなタケ先輩に言葉を返さずに、日浦くんは踵を返してあたしを引っ張って歩いて行った。


「え、ちょ…日浦く「うるさい」」


あたしが言い終わる前にそう言われちゃったから、仕方なく振り返って、ジェスチャーでタケ先輩に謝った。

タケ先輩は一瞬、心配そうな顔を見せて、自分のケータイを取り出した。


“よ る で ん わ す る”

タケ先輩の口が音もなくそう動いて、タケ先輩の手に握られたケータイがヒラヒラと…まるで手を振るかのように動いた。


一瞬の出来事に、日浦くんがあたしを担いだ事に抵抗する事を忘れてしまった。



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