白と黒のフィス
 エルフとヒトは古くから対立が絶えない。

 だけど、この国はそんなエルフと恒久的な和解を目指し、条約を結んだ。

 その条約に書かれている双方の禁止事項が、いわゆるエルフご法度だ。

 その一つに自由意志を持つ者の売買を禁止する条項がある。

 この国もエルフの里も、経済活動においては旺盛で、売れるものは何でも売るし買えるものは買う。

 例えそれが、同族であろうとも。

 エルフに商品価値があったから、エルフ自身が素材階級として商品用のエルフを飼育するようになったのだ。

 元々、エルフは魔術に長けていて、その触媒として、エルフの髪が用いられることが多い。

 魔術師相手に、髪を提供するために飼育されていた。

 それを輸出するようになっただけに過ぎない。

「承知の上か。
ならば、俺がお前を条約の元、殺処分してもよいというわけだな」

 こちらを見て言った彼の目は笑っていなかった。

 それだけで、背中がぞくりとする。

「あなたは、私がドラゴマブカの牙を無効にしているのを知りながら、私を落札したのでしょう。
だったら、あなたも条約違反に問われるわね」

「なかなかいい線だな。
だが、一つ忘れていることがあるぞ」

「何を忘れているというの?」

「このネックレスの黒真珠の数だ」

 改めて彼のネックレスを見る。

 数が多いとは思ってはいたが、その数は・・・
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