白と黒のフィス
「・・・九つ・・・嘘でしょ」

「ほう、やはりこの意味を知っていたか」

 九つの黒真珠、それは薬法師の最高位を意味する。

 つまり・・・

「ここにいやがったか」

 急に背後から低い男の怒声が聞こえた。

 振り返ると、顔の左半分が包帯で覆われた男が店の入り口にいた。

 更に、数人の人影が、暗い店内に入ってきた。

 包帯の男は、確か、さっき彼に殴られた男だ。

 生きてたんだ。

 意外と丈夫なんだな、人間って。

「なんだ、お前たちは」

 ヒュードも隣で振り返って言った。

 声に、なんとなく不満な響きがある。

 お酒の途中だからかな?それとも・・・

「ふざけんな!
ザーグ横丁でいきなり殴りやがっただろうが!」

「おい、そんなことあったか」

 彼は私に聞いてきた。

 どう答えればいいのよ。

 彼に合わせているとこっちが頭おかしくなりそうだ。
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