白と黒のフィス
「殴ってたわよ。おもいっきり」

「そう言われるとそんな気もするが、それだけのことだな。
で、何の用だ」

「貴様、ジーカイザーをなめてんのか!」

「ジーカイザー?
ああ、なんだ、あの時の」

「やっと思い出しやがっ・・・」

 その動きは、エルフの私ですら、捉えきれなかった。

 暗い獣脂ランプの明りの中、包帯男が無事だった右顔面を粉砕され、テーブルを道づれに後ろへ吹きとんだ。

「やっぱ、中途半端はいけねぇよな」

 伸びきった左腕を戻しながら、彼は言った。

「お客さん、喧嘩はご遠慮ください」

 カウンターからマスターの声がする。

 相変わらず棒読みだ。

「ちょいと田舎者をしつけるからよ。
被害は全部こいつらにツケといてくれ」

「カウンターは壊さんでくれ」

「わかったよ」

 同時に男たちの輪が狭まる。
< 12 / 23 >

この作品をシェア

pagetop