白と黒のフィス
「次ぎ、56番、エルフ、メス、換算年齢15、ヘアグレード7。
さあ、本日の目玉商品だ。
12000から開始だ」

 競り人である店主の声が、狭い店舗に響きわたる。

 56番と言うのは、私のことだった。

 ヘアグレード7と言うのは、良の下といったところ。

 換算年齢というのは、ヒトの使う年齢に直したらこれくらいだろうという年齢だ。

 エルフの暦と年齢は色々と複雑で、ヒトには解りづらい。

 換算年齢15は、採髪には少し高い。

 そんな訳で、本日の目玉品にされてしまった。

 私は、商品展示用の小さな檻の中で、じっと膝を抱えて座っていた。

 照明の加減で、向こう側にいる競りの参加者の顔ぶれはよく見えなかった。

「さぁさ、12000だよ、エルフでこの値段はなかなか出物が無いよ」

 店主の声に、何人かがサインを送ったようだ。

「15000、17000、さぁ、他はいないか?
17500、18000」

 競りの様子からすると、落札候補者は、二人に絞られた感じだ。

「18200、さぁさ、いないか、いないか。
はい、18500」

 ここで、もうひと声出させるかどうかは、店主の腕に掛かってくる。

 19000まで出させればいい儲けになるだろう。

 私の価値など、その程度で上々だ。

「18500、18500だよ。
18700、他にいないか、いないか」

 もう一声か二声で落札しそうなその時、強い照明に照らされた檻の前に、大きな人影が現れた。

 そいつは、檻の鉄格子を両手で掴んで、中にいる私を覗き込んできた。
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