白と黒のフィス
 朝食は、黒麦のブレッドに蜂蜜をしみ込ませて、表面をカリカリにあぶったものと酪茶、後は数種の果物だった。

「これって、あなたの手作り?」

 彼は、もちろんと答えた。

「随分器用なのね」

 私は、ウサギに剥かれたリンゴをひときれ摘まんで言った。

「料理は趣味だからな。
さあ、食べよう。
朝食は一日の基本だ」

 それには同意だ。

「いただきます」

 彼の向かいに座って、摘まんでいたリンゴを一口で頬張った。

 しゃりっとした歯ごたえと甘酸っぱい果汁が口に広がる。

 文句無し、私の好みだ。

 それを皮切りに、次々とテーブルの食べ物が減り、軽い満腹感と共に朝食を終えた。

「ごちそうさまでした」

「さてと、仕事に行くぜ、支度しな」

「仕事?」

「そうだ。たんと食べたんだから、食べた分は働いてもらわんとな」

 そう言って彼は、空の食器を片付け始めた。

「手伝います」

「ここはいい、部屋の衣装箪笥に着替えが入っているから、着替えてこい」

「え、でも・・・」

「すぐに働いてもらうから、急げ」

「は、はい」

 何とも強引に、私は食堂を追い出されてしまった。
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