透明度にゼロを贈れ


面白い客だ、と彼は思った。


彼がここを始めて
もうすぐ3年になるが
ここまでのキャリアを
持つ客は初めてだった。


"ここ"も随分名が売れたものだ。

映画のなかで鮮やかに輝く女が
ひっそりと現れる。

いつか好きな女優が
来ないだろうか、
と彼は思索を巡らせる。


しかしそれはないほうが
いいように思われた。




ここは

自殺を手助けする場所なのだから。



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