フユザクラ


先程私がスイングした空のスクバがものの見事に直撃したようで、
柑奈は脇腹を押さえながら若干涙目になっていた。


ざ ま あ み ろ。


「・・・柑奈。もう一回だけ確認したいんだけど」
「え、あぁうん」
「『あの変態』が体育館で待ってるって
 冗談だよね?」

冗談であってくれ・・・!!

そう切にわずかな期待をかけて、
私はつい二十秒前に柑奈が言った言葉を聞き返してみる。



「ううん。ホント」

残念無念。
親指立てて言い切りやがりました。

「だから、体育館にいるあの変態を、咲良に追い出してもらおうと思っ」
「ぐぬぅぅぅーーーー!!」
「げふぅっ!?」

私はもう一度変な掛け声(?)を上げながら、
スクールバックをフルスイングして、再度柑奈の脇腹辺りにクリーンヒットさせ、
強制的に友人の口を塞いでやる。



・・・恐らく、この状況を見ている人の大半が、
『何故体育館に呼び出されたくらいで
友人に八つ当たりをするのだろうか』
と御思いでしょう。



理由はとっても簡単。

こんなさわやかな朝っぱらから
あの『超絶変態野郎』
に、会いたくないからです。

むしろそれ以外の理由が見当たりません。
そして、その変態に会う理由を作って持ってきた目の前の友達を、
全力で叩き潰したい衝動が抑え切れません。
この後の惨状は、見て見ぬフリを推薦します―――




・・・・・・と、そういえば
今の今まで自己紹介をしていなかった。
興味は無いだろうが聴いて欲しい。


―――私の名前は




< 3 / 4 >

この作品をシェア

pagetop