フユザクラ
相沢 咲良。
日和高等学校2年A組ソフトボール部所属の、現役女子高生。
成績も運動も容姿でさえ自信を持てない可哀想な奴だけど
よく分からない方向にブッ飛んだテンションが唯一の自慢だよ!!
・・・とかなんとか言ってみたりしますが、
思い返してみると、自慢できることでもなんでもない。
うん。まぁ気にしない。
「咲良お願いッ!後生だから!」
「無理です」
「そこをなんとか!」
「無茶です」
両手をパンッと合わせて頭を下げてくる柑奈に、全力で首を横に振って答える。
「咲良ァ・・・お願いだよ。ホントに困ってんのよ、内川のバカには」
「うーん・・・だろうね」
「だろうねじゃないよ・・・。アレにいられるとバレー部の道具が出せなくて、
私達朝練できないんだって」
「それは大変だ」
笑顔でそう返すと、バレー部である柑奈はガックリと肩を落として、私に背を向けた。
『朝練ができない』という言葉には同情したけど・・・諦めた・・・かな?
内心全力でガッツポーズ。
――と、思いきや、
柑奈がなにやらボソッと呟い―――
「後でお好み焼きおごろうかと思ってたけど 却 下 だね」
「待って待って待って待って
行く行く行きます行かせてください」
その瞬間、私の中で意見が一瞬で反転した。
食べ物に釣られるベタな展開?そんなものは知らない!
お好み焼きの為ならば、私は何だってしてやりますよ!
さぁ、いざ体育館へレッツGO!
待ってろ変態!打倒内川!!
「いってらっしゃーい」
教室の中で手を振る柑奈の姿なんて、
私の目の中にはもはや映っていなかった。
「怪我しないでねー」
当然、この言葉も。