翔るキミ、翔んだキミ。
バィ*恵摘
むしゃくしゃする。
だからつい、友愛の左手首をいつもより何倍も強く握った。
まるで、自分に言い聞かせるみたいに。
友愛は俺のだって、俺自身が安心するために。
にしても、夏本番が近づく6月にしては、友愛の腕は冷た過ぎた。
…まぁ、原因は、俺。
友愛、昔から怖くなったり寂しくなったりすると、腕の温度が急激に下がるんだよな。
怖い…よな、こんな俺。
でもさ、友愛がモテるとか聞いたら、嫉妬で頭おかしくなっちゃうわけよ…。
分かる?
思春期の健全な男子の思考回路の可哀想さ。
「友愛、たくさん告られたことあんの?」
自分でも分かるくらい低めの声で聞く。
「…」
もちろん、返事はない。
怖がってるんだろうと思って、学校から大分離れた公園の前で初めて振り返った。
「な…!?」
「ッ……うぅぅ………恵、摘
…えつ、みぃ…………恵摘…」
友愛は、涙をいっぱい溢れさせながら泣いていた。
『恵摘』って連呼しながら、アスファルトの地面を涙で濡らしていく。