翔るキミ、翔んだキミ。

バィ*恵摘



むしゃくしゃする。



だからつい、友愛の左手首をいつもより何倍も強く握った。



まるで、自分に言い聞かせるみたいに。



友愛は俺のだって、俺自身が安心するために。



にしても、夏本番が近づく6月にしては、友愛の腕は冷た過ぎた。



…まぁ、原因は、俺。



友愛、昔から怖くなったり寂しくなったりすると、腕の温度が急激に下がるんだよな。



怖い…よな、こんな俺。



でもさ、友愛がモテるとか聞いたら、嫉妬で頭おかしくなっちゃうわけよ…。



分かる?



思春期の健全な男子の思考回路の可哀想さ。



「友愛、たくさん告られたことあんの?」



自分でも分かるくらい低めの声で聞く。



「…」



もちろん、返事はない。



怖がってるんだろうと思って、学校から大分離れた公園の前で初めて振り返った。



「な…!?」

「ッ……うぅぅ………恵、摘
…えつ、みぃ…………恵摘…」



友愛は、涙をいっぱい溢れさせながら泣いていた。



『恵摘』って連呼しながら、アスファルトの地面を涙で濡らしていく。



< 14 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop