翔るキミ、翔んだキミ。


「ちょっ!!…」


やっと声が出たのは、私が本棚に強く押さえつけられたときだった。


相変わらず、目の前の小悪魔は、ニコニコしている。


「なにがしたいわけ!?」


少し声を荒げてみたが、生まれつきの優しい声は、小悪魔になにも感じさせぬまま静かな図書室へ呑み込まれる。


「なにって…キスがしたいんです。」


平然と、さも当たり前のように言う小悪魔に、恐怖を感じた。


…ううん。


逃げ切れなかった自分に、とても腹が立った。


恵摘に優しくチューされた唇に、こんな奴の唇が触れたかと思うと…。


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