ありえない高校生マリッジ
「私は那岐ちゃんのお異母兄ちゃんではないよ。従兄だ。
詳しい話は外で話しよう」

「従兄??」

私と伊集院先輩はバルコニーに出た。
夜空に向かって伸びる木々の枝と葉も漆黒に染まっていた。
緑の木々達も色づく季節。
パジャマだけでは少し肌寒く、身が一瞬震えた。
「これ着て」
と伊集院先輩は着ていた黒のパーカーを肩に掛けてくれた。
人に対する気遣いを忘れない伊集院先輩。伊集院家は政治家の名家。そして、彼は総理の息子。常に人の視線に晒されてるせいもあると思う。
神経に安らぎの無い彼が少し気の毒だった。



「君には訊かれたくなかったんだけど・・・」

「でも、訊いちゃいました」

「・・・君の父親は総理の弟で、大手メガバンク『帝和銀行』の伊集院鍛造頭取だ」

「『帝和銀行』?私、通帳とキャッシュカード持ってます」

「・・・鍛造叔父さんには妻も子供も居る。君の母親の代枝子さんとは不倫関係だった」

「不倫・・・」

「・・・だから、渚の父親の氷室さんも生むのは反対したんだと思う。叔父さんだって・・・」

私は生まれてはいけない子供だったんだ。



夜の闇に辺りが染まっているように、私の心も黒く塗りつぶされていく。



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