麻川くんより、バカでした。
兄ちゃんの部屋は穴だらけ。
床には金属バットやペンチが転がっている。
兄ちゃんは変わってしまったんだ。

癒恋はまだ小学生だったから俺が守らなきゃいけなかった。
癒恋に暴力を振ろうとすれば、俺が全力で癒恋を守った。
だから中1の頃の俺は体中傷だらけだった。
学校には
「最近原っぱで遊ぶのがマイブームで」
などの嘘でごまかしていた。
でも、兄ちゃんはやっぱり、兄ちゃんだったんだ。
俺を殴ったあと
「ごめんな…こんなんになった兄ちゃんを許してくれ…」
と俺の傷を拭く。
涙を流しながら…
そんな兄ちゃんを見れば俺らだって安心してしまう。
だからいけなかったんだ。
その兄ちゃんを許してしまった俺らがいけなかったんだ。

日に日に暴力は増していった。
学校にもバレてきてしまった。
「お前、兄貴に暴力うけてんだろ?」
近所の噂の的になった。
そうすれば親はもっと怒る。
そして最後に親が放った言葉は

「春斗なんか生まれてこなければよかったのに」

兄ちゃんは怒り狂った。
金属バットで壁を壊し、
1人、泣き叫んでいた。
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