麻川くんより、バカでした。
その次の日からはもう兄ちゃんを見ることはなかった。
部屋はそのまま、親は入ろうとしない。
今でも俺は入る勇気がない。
1回だけ入ったことがあったが、涙があふれ出てきて
部屋に数分しかいれれなかった。
閉めきったカーテンと、10ヵ所以上もあいている穴。
家族写真は粉々に破り捨てられ。
ほこりだらけだった。
だけど、1枚だけ破らずに机の上においてあった。
それは
俺と癒恋と兄ちゃんで撮った写真だった。
べこべこになっている写真は、多分兄ちゃんの涙のあとだろう。

簡単に言えば兄ちゃんは家出したんだ。
でも、俺は兄ちゃんが悪いとは思わない。
悪いのは全部親のせいだと思っている。
でもその親は今父親しかいない。
母親はもう…いなくなってしまったんだから。
兄ちゃんは“消された“んだ。
兄ちゃんは“消された“んだ。

兄ちゃんがいなくなった次の日から
親は『春斗』という言葉を一度も出さなかった。

俺は兄ちゃんに会いたい。
でも会ったら殴られるという記憶で体が震えてしまうような気がしてしまう。

俺は愚かな人間なんだ。
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