麻川くんより、バカでした。
コンビニに入る。
まず俺だけ。俺だけ会って、あとから癒恋に会わせる。
足を入れて周りを見渡す。
見たところ人はいないように見える。
奥のほうへ入るとジュースが置いてあるところで1人立っている人がいた。
足音をたてて近寄ると、その人は振り返る。
「タツヤ?」
その人は兄ちゃんだった。
髪の毛は黒くて黒ブチメガネをかけている、さすが顔立ちいいだけあるな。
髪の毛をワックスで盛り立て、服はイマドキのコーディネート。
兄ちゃんが、兄ちゃんじゃないような気がした。
前はメガネなんてかけてなかった。
こんなに服もイマドキーって感じじゃなかった。
なのに…
「兄ちゃん?」
「質問を質問で返すなよ。」
ははっと笑う。その表情は昔の兄ちゃんだった。
「元気そうで良かった。」
俺の周りを見てから癒恋がいないことに気がつく。
「癒恋、外にいるよ。今つれてくる。」
手をひらひらさせて了解を得る。
「癒恋、兄ちゃんいたぞ。いくよ。」
コクリとうなずいて俺のあとをついてくる。
さすがに怖いんだろうな。
俺の服の裾を引っ張る。
「癒恋…?」
また、癒恋はコクリとうなずく。
「大きくなったなーっ!」
わしゃわしゃと癒恋の頭をなでる。
「春斗兄ちゃん…?」
目がうるうるなっている癒恋を
「ごめんな…」
といって抱き寄せる。
それは兄ちゃんの精一杯の勇気だということが分かった。