麻川くんより、バカでした。
「お前らも大きくなったな…」
俺と癒恋の頭を軽く叩く。
「春斗兄ちゃん。お父さんに会いなよ。」
頭をなでたその下から覗くように、冷たい視線で兄ちゃんに癒恋が言う。
今まで見たことないような…かお。
本当に癒恋か疑ってしまうような、まるで感情がないような…
「俺は会いてぇよ。でもお父さんが会ってくれるかな…?」

…そうだ。お父さんは兄ちゃんが家出してから今まで、兄ちゃんを“いない“扱いしてきたんだ。いまさら会ってくれるわけもない…

「きっと…お父さんなら会ってくれるよ!!」
さっきとは全然違う明るい顔で癒恋が言う。
それを遮るように俺は
「んなわけねぇだろ。兄ちゃんだけじゃなくて、お父さんのことも考えてみろよ。」
といってしまった。
俺は兄ちゃんに帰ってきて欲しいという感情と
お母さんを追い詰めたのは兄ちゃん…もう帰ってくるな…という感情。

兄ちゃんのこと、心の中では許してなかったんだ。
いや…許したくなかったんだ…。

兄ちゃんがいたから家族がめちゃくちゃになったんだ…
俺は兄ちゃんを許してはいけない…
俺が癒恋を守らなくちゃ…
なあ…そうだろ?母さん…
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