秘密のMelo♪y⑤*NY編*
「可能性はゼロではない。賭けることにした。…あれは強いんだよ。とても強い。私などの力を必要としないほどに強いんだ。…大丈夫に決まっている」
強く言い切るお父さんの表情は、それでも不安げなものだった。
せめて…せめて早く、楓が見つかってくれれば。
そう思わずにはいられなかった。
『あの…ところで…カエデは…?』
ハディという彼女が英語で誰ともなく問いかける。
そういえば…楓のことはまだ言っていなかったな。
『楓はまだ見つかっていない』
『!』
『…!?』
辛うじて英語が話せるだけの僕にはありがたかった。
彼らが英語を話せることが…。
『あいつは真緒ちゃんと一緒に…極めて近くにいたはずなのに、真緒ちゃんが発見された近くにはどこにもいなかった』
『それ…って…?』
『…分からない。まだ何も分からないんだ』
事故が起きてからはまだ、半日ほどしか経っていない。
今もまだ続々生存者が発見されているし、そのうちきっと…きっと顔を出すに決まってる。
あの楓が。
真緒ちゃんをあんなに愛している楓が、彼女を残して逝くわけがないんだ。
絶対に……絶対に。
それは誰しも、同じ思いだった。
『…んせい…! もう輸血できる血液がありません!』
「!」
処置室から響いてくる声に、パッと振り返る。
慌てた様子の看護師の声。ドクンと心臓が大きく鳴るのを感じた。